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三日に一度くらい書けたらいいなの日記。たまにみじかい話も書きます。
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不二おめでとーさま!

(テニス/36。不二→菊ぽいです。不二像が崩れ気味なのでご注意くださいすいません)

「誕生日おめでちゅー!」
「なんでネズミ?」
「えっどこにネズミ!? やめていま俺にネズミの話はこないだエミちゃんにネズミーランドおごらされてしかもパレードの悪夢がね!」
 両手で頬を押さえて男子高校生の太い声でキャーと気色悪い悲鳴を上げる菊丸に、不二はあさっての方向に目を逸らしてため息をついた。
 噛み合わない会話は菊丸の得意分野だ、しかし以前乾にそう言ったら会話というのは相手が存在してこその行為であるから菊丸の相手をしている不二の得意分野でもあると言えるなとたいして興味もなさそうに分析された、いけ好かないデータおたくめ。
 ため息が白く煙り、視線の先の風景、青春学園高等部校舎をわずかばかりぼやけさせる。ああなんて立ち並ぶ木々の寂しいこと。空の青いこと、空気の研ぎ澄まされていることクソ寒い。
「エミちゃんて誰」
「え? カノ」
 ジョ、まで答える寸前で菊丸の声は途切れた。視線を戻すと、しくじったと隠しもせずに顔に書いてへらりと締まりなく笑う。おもしろくもないと不二はマフラーに顎をうずめた。
「一緒に初詣にいったユウコちゃんはどうしたの。ずっとラブラブでいられますようにってふたりで神様にお願いしたんでしょ」
「あーそれねーなんかユウほんとは新しい彼氏できますよーにってお願いしてたみたいでそんで叶っちゃったみたいっつーかなんつーか」
「最低」
「だよねー!」
「英二がだよ」
 けんもほろろに不二が目を細めると、菊丸は薄ら笑いを引きつらせて黙った。いつもみたいに駄犬のごとくぎゃんぎゃんと反論してこないところを見ると十分に自覚があるようだ。あるくせに別れた原因を女子に押しつけようだなんてどこのクズだ。
 カシクラユウコです、エイジくんとつきあってます。そう言ってはにかんで笑ったユウコちゃん。彼女のほうから菊丸を振るなんて考えられない。
 正門から出てきた女子の二人連れが、他校の制服姿の菊丸を無遠慮に見ながら通り過ぎていった。中の中の学力レベルの可も不可もないテニスが強いわけでもない公立の高校に進学した菊丸は、去年の四月に入学して以来、不二の知る限りで二回彼女が変わっている。そしていま知った三回目。
「大石たちは?」
 菊丸が露骨に話を逸らした。もともと追求する気もないので不二はその誘導にのってやる。
「もうすぐくると思うけど。先にどこか入っててもいいって言ってたよ」
「じゃーマックに避難、超寒い。俺マックフルーリー食おっと」
 寒さとアイスが連結する菊丸の嗜好が不二には毎年理解できない。こたつでアイスってなんだその不正解。日本人ならみかんだろう。
 強く風が吹き渡り、不二は思わず両手で耳を押さえた。冬場にいちばん庇わなければいけないのは耳だと強烈に思う。本当に凍ってもげ落ちてしまう気がして笑えない。隣の菊丸は耳ではなく、中学時代よりやや長く量は軽くウルフスタイルのようになった髪を庇っている。
「不二もランドいったの?」
 片手で髪を整えつつもう片手でマックで待機と大石にメールを打ちながら、菊丸が不二を見た。彼の脈絡ない問いにはとうに慣れきっているので、答えだけを簡潔にして問い返しはしないと不二は決めている。なんでそう思うのさ、という疑問はわくけれど。
「いってないよ」
「じゃなんでネズミなの」
「英二が最初に言ったんでしょ」
「は?」
「おめでちゅー。チューチュー」
 鳴きマネなんてとてもいえない投げやり極まる態度で唇をとがらせた不二に、菊丸はなんだか変なものを見るような目を向けた。しまった最悪だ四年ぶりの僕の誕生日はいまめでたく呪われた、英二にそんな目をされるなんて人生で五本の指に入る失態。
「不二にしては貧乏な発想力」
 うわ、本当に最悪だよ。それを言うなら貧困じゃないのと突っ込む気力も起きない。
「ボク四歳、て言ってよ」
 青学高等部の正門前から歩き出しながら、菊丸がアホを企む悪ガキみたいに歯を見せて笑った。
「ボク不二周助、今日で四歳」
「うわ、つっまんねえ!」
 顔の横に指四本立てる大サービスでなんのためらいもなく言う通りにしてやると、菊丸は心底がっかりしたようでさらに歯を剥き出して不満を垂れた。
「プライドとかないんですかー」
「山のようにあるけど英二相手に使うほど安くないんだよね」
「値下げしてください!」
 菊丸の息が白く渦巻く。よくしゃべる彼のことだ、真冬は常に白いものに巻かれているのだろうなあと思いながら、不二はまた両耳をてのひらで覆った。自分の生まれたこの季節にもっとも耐性がないなんてなんだか理不尽な気がする。
 いつもと変わらず軽そうなカバンに手を突っ込みながら、横で菊丸が何か言った。風の音と耳を塞いでいるせいでうまく聞き取れず、不二は渋々手をはずす。
「そんな周助くんにプレゼントフォーユー!」
 そんな、が何にかかっているのか一瞬つかみ損ねたが菊丸のカバンからニュ、と出てきた代物を見て即座にわかってしまった、わからないままでいたかったと不二はつい視線を逃がす、それが誕生日プレゼントだと抜かすのなら僕は断固いらない。
「耳寒いんでしょ?」
 包装も何もなくそのまんまで菊丸が差し出したのは真っピンクのふわふわイヤーマフ。それだけならまだよかった(いらないけど)本当にただ単純に不二の耳を心配してくれているのなら(超いらないけど)、しかしヘッドバンドの部分に何かついている。それこそ夢の国のプリティなヒロインばりのどでかいリボンかと思ったが違った。それはあれかな、俗にいう猫耳ってやつなのかな英二くん?
「ユウコちゃんにでもあげようと思ってたのが無駄になったわけ?」
「不二にあげるんで買ったに決まってんじゃん」
 ふたたびのユウコちゃんの名に今度は動じた様子もなく菊丸は即答した。彼の言葉の真偽を容易に見抜けてしまう自分を、不二は心から残念に思った。菊丸の気持ちには感謝を示してやりたいがとりあえずあまり自信はない。ありがとう英二、と偽りなく愛情込めて言ってみれば顔が勝手に薄笑う。
「ぶっ殺すよ?」



不二誕生日おめでとう…ていうかすいません…。
途中まで書いたのが一回全部消えて絶望したせいか当初の予定より大幅に変な話になってしまいました。つーかちゃんとした更新する時間ないからってブログに書き殴るなっつー話ですよね…。変な36が好きですすいません。

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