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三日に一度くらい書けたらいいなの日記。たまにみじかい話も書きます。
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跡部さんの悪夢

(※ジロ跡)

 ポイントカードの元祖をうたう某大型電化製品量販店の家電フロアに、慈郎とふたりでいる。跡部と揃いの、なのに到底同じには見えないだらしなく着崩した制服姿の慈郎が、威圧的に並べ立てられた大容量の冷蔵庫群のあいだをとことこ進むのを、跡部も惰性のように追って歩いた。
 多くのカップルや親子連れがパンフレットまたは店員片手に真剣に品定めをしている中、まるで商品を選ぶ気配なく通路を直進する大型冷蔵庫なんて買い物をする財力も必要もないはずの制服姿の中学生、である自分たちの異質さは当然だんだんと居心地の悪さにつながってゆく。れいぞーこ、と確かに慈郎は言ったのに、どれひとつ興味を示すことなくただフロアを突き進む。
「ジローてめえちゃんと見てんのかよ」
 呼ぶと慈郎は足を止めて振り返り、うん、と頷いた。
「おれがはいれるくらいおっきいのがいい」
 またアホなことをと跡部がため息をつく間に、慈郎はてててと洗濯機のコーナーへ移動を始めた。
「おい!」
「せんたっき。おれがはいれるくらいおっきいのがいい」
「あのな」
「かんそうき。おれがはいれるくらいおっきいのがいい」「おーぶんれんじ。おれがはいれるくらいおっきいの」「ゆわかしぽっと。おれがはいれるくらい」「そーじき。おれが」
 ああついに慈郎が壊れた、と跡部は思った。修理はきくのだろうかと気が滅入った。というかそもそもジローおまえ根本的にありとあらゆる使用方法を
「誤解し」
 と、いっそ引くほど明瞭に言いかけた自分の声で、跡部は目を覚ました。ベッドの隣では慈郎がめずらしく起きていて、鼻先まで布団をかぶったまま気味悪げに跡部を見つめている。
「跡部、れいぞーこほしいの?」
「……いらねえよ」
「おっきいれいぞーこ?」
「黙れ」
 時計を見れば午前四時だ。ありえない時間に起きているありえない慈郎と、ありえない夢を見てありえない寝言をかましたらしい自分。すべてぶち壊したいと跡部は願った、修理などきかなくていい!
「ねー跡部、せんたっき?」
「一生入ってろ!」

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