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三日に一度くらい書けたらいいなの日記。たまにみじかい話も書きます。
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3月21日
(ぺよん/ネタバレ/3月21日のこと)



 月森孝介は耐えたのである。
 昨日、みんなに挨拶がしたくて町中を歩き回ったときも、最後の最後に神様をぶん殴りに行かなきゃならなくなったときも、今日、いま、八十稲羽駅のホームからもう乗り慣れたローカル線に乗り込むこの瞬間だって、耐えているのである。
 挨拶回りをするほどたくさんの人とつながりを持っていたことをいまさら実感して、嬉しくて泣きたくなった。
 神様の呪いから月森をかばって仲間たちが消えていくのがこわくて、こわくてこわくて、泣きそうだった。
 そしていま、電車の発車と同時にみんなが、花村が、里中が、天城が、クマが完二が久慈川が白鐘がホームを走り出すから、そんな超青春映画みたいなことを本気でしやがるから泣きそうです。
 さっきホームで花村に言われた、「しっかしお前ほんと泣く気配ないよな!」。俺が泣いたら菜々子が悲しくなっちゃうだろとこっそり答えたら、ああそっかと花村は納得した様子で一瞬泣き笑いみたいな顔をした。「さっすがお兄ちゃん、強えなー」
 だけど、昨日の夜、月森が布団のなかでこどもみたいに丸くなって、ぎゅっと目をつぶって、夜明けの足音に耳をふさいでいたことを、誰も知らない。
 電車がホームを離れ、誰の声も聞こえなくなって、ようやく月森は深く息をついた。忙しなくまばたきをし、静かにしばらく目を閉じて、またひらいてはまばたきをする。何度もくり返した。みんなで写した写真を持つ手が、すこし震えた。
 五分過ぎて、十分たって、よし耐え抜いた! と小さくガッツポーズをした途端、携帯が鳴った。花村からのメールだった。それをひらく間もなく連続で着信音が鳴り響き、どんどんメールが着信する。

『ほんとは泣きそうになってたの知ってんだぜ!』
『月森くんの涙目なんて超貴重だよねーいいもん見していただきやした!』
『別に我慢しなくてもよかったんだよ?』
『涙は男の勲章っすよ!』
『私とふたりっきりのときは思う存分泣いていいからね、センパイ☆』
『まったく、最後の最後まであなたらしいです』
『せんせいはくまがまもるくま !』

 月森の必死の努力をにこにこと笑い飛ばす仲間たち。
 くっそ、こんなの、泣くわアホ!
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