三日に一度くらい書けたらいいなの日記。たまにみじかい話も書きます。
[PR]
2025.04.20 Sunday
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
初夢未遂
2008.01.01 Tuesday
(おお振り/1年9組)
一月一日って三橋の日じゃん!
二学期終業式、校長先生のお話真っ最中の体育館で突然田島が言った。声でけえ。周囲の生徒たちがちらほら視線を寄越したが、マイクを通した自分の熱弁にあらゆる雑音がかき消されているであろう演壇の校長にまではさすがに届かなかったようで、滞りなくお話は続く。
全校生徒が集合した館内は見渡す限り人人人。けれど整列に対する締めつけがゆるいので各クラスごとの列は雑然と乱れ、ところどころにぽっかり床が見えていたりもする。
今朝はこの冬いちばんの冷え込みになりましたねェーさむういですねェーと白い息とラメラメのまつげを弾ませたお天気お姉さんの言葉は半端なく正しくて、体育館は極寒。直に床に座っているので尻から冷える。短いスカートの下にジャージをはいた女子たちがあっちこっちで身を寄せ合って、寒い寒い校長話なげえと文句を言いながら震えている。私服校なのにズボンはき放題なのになぜにそうまでして制服を着るのか女子。スカートの短さがステータスなのか女子。
男子たちも一部固まり合って暖を取っている。隣のクラスのバカがふたり固くハグし合って、「あっためてダーリン!」「おいでハニー!」、きもいうざいと女子の顰蹙をかっている。うん、キモイ。
と、目を細めて眺める浜田も実は野郎同士で固まっている。というか田島泉三橋に固まられている。理由は単純、浜田のジャケットのフードのもさもさあったかそうじゃね? だそうだ。全身ゴージャス毛皮ならまだしもそんなフードのふちのファーだけであったかいわけが、撫でるな顔をうずめるなつかむな抜ける!
「なんで正月が三橋の日になんの」
「だってイチ月のイチ日だぜ。いちばんの日じゃん」
「い、いちばんっ」
アホな会話がくり広げられているなあと思いながら、浜田は三人の手からフードを取り上げて素早くかぶる。あっずりい! とすかさず田島に非難された。責められる意味がわからない。
「二月二日は、阿部くんの、日だ!」
「んで三月三日はー」
「ひな祭り」
浜田の周りに寄り集まったまま、田島泉三橋はボソボソきゃっきゃと楽しそうだ。平和だなあと浜田はあくびをする。三人がくっついてくるおかげで浜田はぬくぬくだけれど、果たしてこいつら自身の寒さは本当に解消されているのだろうか。
校長の話はまだ続いている。いよいよ佳境のようだが誰も聞いちゃあいない。田島泉三橋のアホ話も続いて、いや一段落ついたようだ。ナインの背番号記念日(なんておめでたい)(ほんとアホだな!)を確認し終えた三橋が、急に力強く浜田の腕をつかんだ。
「ハマちゃん、も!」
「え?」
「ハマちゃんの、日も」
「いやオレはいいって背番号ないし」
つーか誰々の日とか誕生日で十分じゃないですか、というツッコミを秘めてやんわりと断ってみたが、案の定三橋も田島も聞いていない。そして泉の言葉に全面的に悪意が見える。
「んじゃ背番号の代わりに名前でごろ合わせしよーぜ。浜田って名前なんだっけ」
「ハマちゃんは、よしろうだよ!」
「は・ま・だ・よ・し・ろ・う、か。えーと、はが8だろ」
「よしろーで446でいんじゃね? 四月四十六日」
「んな日にちねーじゃん」
「いーじゃん別に浜田だし」
「だめだよ、泉く」
「三橋って浜田尊敬してるよな。いーことねーからやめとき? おまえまでダブっちゃうぜ」
人を呪いみたいに言うなと思いながら、なぜだかひどく眠たくなって浜田は逆らわずにまぶたを下ろす。と、背中合わせに寄りかかってきていた泉の体重が急に肩に移動して、
「お餅いくつ食べる?」
「は?」
「お雑煮するよ、お餅いくつ入れる?」
「は!?」
泉くん言ってることがおかしいっつーかこわい! と鳥肌を立てて慌てて目をあけると泉ではなく、田島でも三橋でもなく、母親の顔が目の前にあった。体育館ではなくて自分の部屋のベッドだった。
「良郎、お餅!」
「え、ふたつ、あ、みっつ?」
「はいはい、あけましておめでとう。ほら起きてよ、朝ご飯にするよ」
もう一度浜田の肩を揺さぶってから、母親は部屋を出ていった。浜田は布団にもぐったまま、まだ回りきらない頭をのろのろと働かせる。
まさかいまの初夢? じゃなくて今日の夜見るのが初夢だっけ、じゃあセーフ? どちらにしろ先日の終業式の夢だし枕の下に宝船もないからいまさら正夢もないけれど、普段いやというほど顔を合わせているのに新年早々夢にまで見たのかと思うと呆れる。
枕元の携帯を見ると、年賀メールがわらわらと届いていた。一緒に進級しようぜ的な一文が漏れなく綴られているのは愛か嫌がらせか。泉のは鉄板で嫌がらせだなと、浜田は力なく枕に突っ伏した。
あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。
今年こそ更新がんばります…!
一月一日って三橋の日じゃん!
二学期終業式、校長先生のお話真っ最中の体育館で突然田島が言った。声でけえ。周囲の生徒たちがちらほら視線を寄越したが、マイクを通した自分の熱弁にあらゆる雑音がかき消されているであろう演壇の校長にまではさすがに届かなかったようで、滞りなくお話は続く。
全校生徒が集合した館内は見渡す限り人人人。けれど整列に対する締めつけがゆるいので各クラスごとの列は雑然と乱れ、ところどころにぽっかり床が見えていたりもする。
今朝はこの冬いちばんの冷え込みになりましたねェーさむういですねェーと白い息とラメラメのまつげを弾ませたお天気お姉さんの言葉は半端なく正しくて、体育館は極寒。直に床に座っているので尻から冷える。短いスカートの下にジャージをはいた女子たちがあっちこっちで身を寄せ合って、寒い寒い校長話なげえと文句を言いながら震えている。私服校なのにズボンはき放題なのになぜにそうまでして制服を着るのか女子。スカートの短さがステータスなのか女子。
男子たちも一部固まり合って暖を取っている。隣のクラスのバカがふたり固くハグし合って、「あっためてダーリン!」「おいでハニー!」、きもいうざいと女子の顰蹙をかっている。うん、キモイ。
と、目を細めて眺める浜田も実は野郎同士で固まっている。というか田島泉三橋に固まられている。理由は単純、浜田のジャケットのフードのもさもさあったかそうじゃね? だそうだ。全身ゴージャス毛皮ならまだしもそんなフードのふちのファーだけであったかいわけが、撫でるな顔をうずめるなつかむな抜ける!
「なんで正月が三橋の日になんの」
「だってイチ月のイチ日だぜ。いちばんの日じゃん」
「い、いちばんっ」
アホな会話がくり広げられているなあと思いながら、浜田は三人の手からフードを取り上げて素早くかぶる。あっずりい! とすかさず田島に非難された。責められる意味がわからない。
「二月二日は、阿部くんの、日だ!」
「んで三月三日はー」
「ひな祭り」
浜田の周りに寄り集まったまま、田島泉三橋はボソボソきゃっきゃと楽しそうだ。平和だなあと浜田はあくびをする。三人がくっついてくるおかげで浜田はぬくぬくだけれど、果たしてこいつら自身の寒さは本当に解消されているのだろうか。
校長の話はまだ続いている。いよいよ佳境のようだが誰も聞いちゃあいない。田島泉三橋のアホ話も続いて、いや一段落ついたようだ。ナインの背番号記念日(なんておめでたい)(ほんとアホだな!)を確認し終えた三橋が、急に力強く浜田の腕をつかんだ。
「ハマちゃん、も!」
「え?」
「ハマちゃんの、日も」
「いやオレはいいって背番号ないし」
つーか誰々の日とか誕生日で十分じゃないですか、というツッコミを秘めてやんわりと断ってみたが、案の定三橋も田島も聞いていない。そして泉の言葉に全面的に悪意が見える。
「んじゃ背番号の代わりに名前でごろ合わせしよーぜ。浜田って名前なんだっけ」
「ハマちゃんは、よしろうだよ!」
「は・ま・だ・よ・し・ろ・う、か。えーと、はが8だろ」
「よしろーで446でいんじゃね? 四月四十六日」
「んな日にちねーじゃん」
「いーじゃん別に浜田だし」
「だめだよ、泉く」
「三橋って浜田尊敬してるよな。いーことねーからやめとき? おまえまでダブっちゃうぜ」
人を呪いみたいに言うなと思いながら、なぜだかひどく眠たくなって浜田は逆らわずにまぶたを下ろす。と、背中合わせに寄りかかってきていた泉の体重が急に肩に移動して、
「お餅いくつ食べる?」
「は?」
「お雑煮するよ、お餅いくつ入れる?」
「は!?」
泉くん言ってることがおかしいっつーかこわい! と鳥肌を立てて慌てて目をあけると泉ではなく、田島でも三橋でもなく、母親の顔が目の前にあった。体育館ではなくて自分の部屋のベッドだった。
「良郎、お餅!」
「え、ふたつ、あ、みっつ?」
「はいはい、あけましておめでとう。ほら起きてよ、朝ご飯にするよ」
もう一度浜田の肩を揺さぶってから、母親は部屋を出ていった。浜田は布団にもぐったまま、まだ回りきらない頭をのろのろと働かせる。
まさかいまの初夢? じゃなくて今日の夜見るのが初夢だっけ、じゃあセーフ? どちらにしろ先日の終業式の夢だし枕の下に宝船もないからいまさら正夢もないけれど、普段いやというほど顔を合わせているのに新年早々夢にまで見たのかと思うと呆れる。
枕元の携帯を見ると、年賀メールがわらわらと届いていた。一緒に進級しようぜ的な一文が漏れなく綴られているのは愛か嫌がらせか。泉のは鉄板で嫌がらせだなと、浜田は力なく枕に突っ伏した。
あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。
今年こそ更新がんばります…!
PR
COMMENT