三日に一度くらい書けたらいいなの日記。たまにみじかい話も書きます。
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2025.04.20 Sunday
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無自覚いばら道
2008.01.06 Sunday
(おお振り/水谷→泉)
本命は三十一日だったのだけれど三十一日といえば大晦日で大晦日といえば家族揃って蕎麦とか紅白とか格闘技とかカウントダウンライブ生中継とかとにかく団欒なのでその邪魔はできないっていうか断られるの結構必須だしわかってても拒否られたらやっぱへこむっていうか。というわけで水谷は、前日の三十日から探りを入れてみることにした。
朝九時に携帯片手にスタンバったはいいものの、早すぎるだろうかと考え直してベッドでごろごろと漫画を読んで十時まで時間を潰した。朝九時なんていまや早いの範疇を掠りすらしないむしろ遅すぎるけれど、今日は貴重な貴重なお休みだ。つーかそんな気ィ使ってちょっと緊張までして電話かける相手が女の子じゃなくて泉とかってオレキモくない?
「ねー今日って何してる?」
わーキモイかも、と自覚しつつ別に気にするでもなく当初の予定通り泉に電話をして尋ねると、予想外の返答がきた。
『いまから親戚んちの掃除の手伝いいくとこ』
「親戚んち?」
『おじさんが腰やっちゃったっつーからさ』
「へえー。泉ってえらいんだね」
『え、普通じゃね?』
泉の口調が本気で普通なので水谷は耳が痛い。水谷はといえばよそに派遣なんてとんでもない、家の大掃除の手伝いどころか自分の部屋さえまったく片付いていなくて、今年中になんとかしないとお年玉なしという厳しいお達しを食らってちょっと半泣きな状況である(が、とりあえず全部クローゼットに隠してみようと安易なごまかしを企んでいるので反省はゼロ)。
「じゃ明日は?」
『うちの掃除に決まってんだろ。床にワックスかけて窓磨いて網戸洗う』
「が、がんばりすぎじゃない?」
『だって去年受験でほとんど手伝ってねーし。その分今年やんの当たり前じゃん』
「うわあ、泉ってえらいんだねえー!」
心底感心して、尊敬の念すら込めて言った途端電話が切れた。明らかに切られた。慌ててリダイヤルすると、
『あーわり。切りてえーって思ったら手ェ動いちった』
泉ってときどき淡白に平然とひどいよね? と水谷は思ったけれど口には出さない。普段は思ったこと垂れ流し(って人に言われる、そうかなあ?)だけれど、いまは我慢。なぜなら泉の機嫌を取っておかなきゃならない。
「あのさー、じゃあさー、夜はあいてる?」
『なんで』
「初詣ってゆーか除夜の鐘つきにってゆーか、いかない?」
『……オレとおまえで?』
数瞬の沈黙がなんだかいろいろ物語っていた。水谷は思わずベッドの上で体育座りをする。泉のイヤそうな顔が目に見えるよう!
「み、みんなでに決まってんじゃーん」
『おー、時間あけとくわ』
今度の返事は涙が出るほど速かった。泉のわかりやすさが水谷には悲しい。だけどこれで年が明ける瞬間にたぶん泉と一緒にいられる、と膝を抱える腕に力の入った自分はやっぱキモイかも、と思った。
「じゃー明日の夜ね! 連絡すっから!」
電話を切ってからの水谷の動きは今年でいちばん速かった。床に散らばっていた雑誌を一ヵ所に集めながら、握ったままの携帯で花井の番号を呼び出す。なんとしてでも明日の夜までに部屋を片付けなければそしてみんなにも招集をかけなければ、がんばれオレ!
本命は三十一日だったのだけれど三十一日といえば大晦日で大晦日といえば家族揃って蕎麦とか紅白とか格闘技とかカウントダウンライブ生中継とかとにかく団欒なのでその邪魔はできないっていうか断られるの結構必須だしわかってても拒否られたらやっぱへこむっていうか。というわけで水谷は、前日の三十日から探りを入れてみることにした。
朝九時に携帯片手にスタンバったはいいものの、早すぎるだろうかと考え直してベッドでごろごろと漫画を読んで十時まで時間を潰した。朝九時なんていまや早いの範疇を掠りすらしないむしろ遅すぎるけれど、今日は貴重な貴重なお休みだ。つーかそんな気ィ使ってちょっと緊張までして電話かける相手が女の子じゃなくて泉とかってオレキモくない?
「ねー今日って何してる?」
わーキモイかも、と自覚しつつ別に気にするでもなく当初の予定通り泉に電話をして尋ねると、予想外の返答がきた。
『いまから親戚んちの掃除の手伝いいくとこ』
「親戚んち?」
『おじさんが腰やっちゃったっつーからさ』
「へえー。泉ってえらいんだね」
『え、普通じゃね?』
泉の口調が本気で普通なので水谷は耳が痛い。水谷はといえばよそに派遣なんてとんでもない、家の大掃除の手伝いどころか自分の部屋さえまったく片付いていなくて、今年中になんとかしないとお年玉なしという厳しいお達しを食らってちょっと半泣きな状況である(が、とりあえず全部クローゼットに隠してみようと安易なごまかしを企んでいるので反省はゼロ)。
「じゃ明日は?」
『うちの掃除に決まってんだろ。床にワックスかけて窓磨いて網戸洗う』
「が、がんばりすぎじゃない?」
『だって去年受験でほとんど手伝ってねーし。その分今年やんの当たり前じゃん』
「うわあ、泉ってえらいんだねえー!」
心底感心して、尊敬の念すら込めて言った途端電話が切れた。明らかに切られた。慌ててリダイヤルすると、
『あーわり。切りてえーって思ったら手ェ動いちった』
泉ってときどき淡白に平然とひどいよね? と水谷は思ったけれど口には出さない。普段は思ったこと垂れ流し(って人に言われる、そうかなあ?)だけれど、いまは我慢。なぜなら泉の機嫌を取っておかなきゃならない。
「あのさー、じゃあさー、夜はあいてる?」
『なんで』
「初詣ってゆーか除夜の鐘つきにってゆーか、いかない?」
『……オレとおまえで?』
数瞬の沈黙がなんだかいろいろ物語っていた。水谷は思わずベッドの上で体育座りをする。泉のイヤそうな顔が目に見えるよう!
「み、みんなでに決まってんじゃーん」
『おー、時間あけとくわ』
今度の返事は涙が出るほど速かった。泉のわかりやすさが水谷には悲しい。だけどこれで年が明ける瞬間にたぶん泉と一緒にいられる、と膝を抱える腕に力の入った自分はやっぱキモイかも、と思った。
「じゃー明日の夜ね! 連絡すっから!」
電話を切ってからの水谷の動きは今年でいちばん速かった。床に散らばっていた雑誌を一ヵ所に集めながら、握ったままの携帯で花井の番号を呼び出す。なんとしてでも明日の夜までに部屋を片付けなければそしてみんなにも招集をかけなければ、がんばれオレ!
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