三日に一度くらい書けたらいいなの日記。たまにみじかい話も書きます。
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2025.04.20 Sunday
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不二おめでとーさま前日短文。
2011.02.28 Monday
(テニス/36/いつものことですが不二がだいぶキャラ崩壊と思われますのですいません)
隣で菊丸がにやにやしている。
今日は二月二十八日である。
明日は三月一日である。
つまり今年は不二の誕生日がない。
だから菊丸が、朝からずっとにやにやしている。
(英二うぜえなあ)
そう思いはするものの、それこそ朝からもうずっと百回ぐらい思ってはいるものの、不二周助たるもの「うぜえ」なんて品格の崩壊しきった若者言葉を口にしてはならない。そんな日本語存じ上げませんというさわやか極まりない顔をしていなくてはならない。言葉も表情も立ち居振る舞いもうつくしく穏やかで気品あふれる不二先輩、ていう立ち位置絶対死守、悔いなく青春を謳歌するために!(なんて実はぜんぜん思っていないのになぜだか光の速さで身体が条件反射するんである、主に女子、中でも後輩の女子の前では特に)
隣の席の菊丸をなるべく視界に入れないように、不二は机に広げた楽譜のプリントに目を落とす。広い音楽室にはグランドピアノの伴奏が鳴り響き、音大声楽科出身の音楽教師が卒業歌の手本を熱唱中である。
楽譜を目で追いながら不二があくびを噛みころしていると、隣で菊丸が口元も隠さずに大きなあくびを漏らした。目の前の楽譜を見ているのに結局は隣の菊丸の動きまで捕捉してしまうこの視野の広さが、いまこの瞬間は残念でならない。テニスで役に立つものの大半が、コート外で菊丸と接する際にはささやかな弊害に変じる気がする。
ふあああんむ、と口をとじると、菊丸は今度は鼻歌を歌い出した。オリコンのウィークリーランキング一位の曲を軽快になぞるその音程は、室内に響き渡るピアノと歌声の大音量にもまったくぶれることがない。菊丸の歌唱力は不二も認めるところだが、ハン、だからなんすか? という気分である。オリコン一位のその曲を歌う人気女性アイドルグループに不二は興味がない、最近彼女たちに夢中の菊丸にも興味がない。
菊丸の口ずさむJポップと教師の歌う卒業歌とが奇妙に絡み合って耳にすべり込み、じんわりとした不快感に変わる。不二は菊丸のいる左側の耳をふさぎ、横目に彼をにらんだ。
本来不二と菊丸の席は隣同士ではないのだが、音楽室や美術室では教師の放任により自由席制度が定着してしまっていて、そんなとき菊丸は決まって不二の隣をキープする。というような鬱陶し、もとい、睦まじい事実はまったくなくて、菊丸の選ぶ席はそのときどきでまちまちだ。だるいと言っては最後列の端に引きこもり、騒ぎたいときは廊下側のうしろのほうで男子と群れて、大抵は女子と女子のあいだに座っていて、たまに理由もなく不二の隣にくる。隣に座ったからといって特筆すべき会話ややり取りがあるわけではないので、本当に理由はないらしい。
しかし今日に限っては理由があって隣にいる。ハン、と不二はまた鼻で笑いたい気分になる。
「祝いたいなら祝っていいよ」
百一回目ぐらいの(英二うぜえなあ)をこころの中で吐き出しながら面倒にまかせてこっちから話を振ってやると、菊丸はテニスコートで跳ね回っているときみたいに目を輝かせた。
「えっだって不二の誕生日今日じゃないじゃん」
「このあいだ見たスニーカーほしいなあ」
「でも不二の誕生日今日じゃないじゃん」
「現品限りって書いてあったよね」
「不二の誕生日今日じゃないじゃーん」
実に楽しげに声を弾ませる一方で菊丸が携帯を取り出したので、気分屋の名のとおりこのくだらない応酬に早くも飽きてくれたようだと不二は不覚にも内心安堵した。が、菊丸がにやにやと見せて寄越した携帯の画面には、先日二人でショッピングモールをふらついた際に不二の目に留まったスニーカーが写っていて、おまけにそれを履いているのが自宅の玄関先でモデル立ちをした超決め顔の菊丸だったので、
「英二うぜえええ!!」
不二のあんなにでっかい声はじめて聞いた、と後日菊丸は言った。わりと本気で喉輪をしたら彼にしてはめずらしく切羽詰った様子で謝ってきたのでその場は穏便にすませてやったが、向こう一年間は許さないと決めている。
生まれて十五年目の二月二十八日、不二は音楽教師に怒られて、担任にもチクられて怒られて、その日一日クラスがなんとなくざわついていて、「品行方正な不二周助」の評判はちょっと下がったようである。
* * *
祝ってなくてすいません。ていう謝罪がもはやデフォルトですいません。
あと閏年の計算あってるかどうか不安なんですが確認してる時間なかったっていうだめっぷりでほんとすいません…。
毎回言ってますが、こういう不二が、こういう36が好きです…。
拍手ありがとうございます、とってもうれしいです。
日記はまたあらためて書きます。
隣で菊丸がにやにやしている。
今日は二月二十八日である。
明日は三月一日である。
つまり今年は不二の誕生日がない。
だから菊丸が、朝からずっとにやにやしている。
(英二うぜえなあ)
そう思いはするものの、それこそ朝からもうずっと百回ぐらい思ってはいるものの、不二周助たるもの「うぜえ」なんて品格の崩壊しきった若者言葉を口にしてはならない。そんな日本語存じ上げませんというさわやか極まりない顔をしていなくてはならない。言葉も表情も立ち居振る舞いもうつくしく穏やかで気品あふれる不二先輩、ていう立ち位置絶対死守、悔いなく青春を謳歌するために!(なんて実はぜんぜん思っていないのになぜだか光の速さで身体が条件反射するんである、主に女子、中でも後輩の女子の前では特に)
隣の席の菊丸をなるべく視界に入れないように、不二は机に広げた楽譜のプリントに目を落とす。広い音楽室にはグランドピアノの伴奏が鳴り響き、音大声楽科出身の音楽教師が卒業歌の手本を熱唱中である。
楽譜を目で追いながら不二があくびを噛みころしていると、隣で菊丸が口元も隠さずに大きなあくびを漏らした。目の前の楽譜を見ているのに結局は隣の菊丸の動きまで捕捉してしまうこの視野の広さが、いまこの瞬間は残念でならない。テニスで役に立つものの大半が、コート外で菊丸と接する際にはささやかな弊害に変じる気がする。
ふあああんむ、と口をとじると、菊丸は今度は鼻歌を歌い出した。オリコンのウィークリーランキング一位の曲を軽快になぞるその音程は、室内に響き渡るピアノと歌声の大音量にもまったくぶれることがない。菊丸の歌唱力は不二も認めるところだが、ハン、だからなんすか? という気分である。オリコン一位のその曲を歌う人気女性アイドルグループに不二は興味がない、最近彼女たちに夢中の菊丸にも興味がない。
菊丸の口ずさむJポップと教師の歌う卒業歌とが奇妙に絡み合って耳にすべり込み、じんわりとした不快感に変わる。不二は菊丸のいる左側の耳をふさぎ、横目に彼をにらんだ。
本来不二と菊丸の席は隣同士ではないのだが、音楽室や美術室では教師の放任により自由席制度が定着してしまっていて、そんなとき菊丸は決まって不二の隣をキープする。というような鬱陶し、もとい、睦まじい事実はまったくなくて、菊丸の選ぶ席はそのときどきでまちまちだ。だるいと言っては最後列の端に引きこもり、騒ぎたいときは廊下側のうしろのほうで男子と群れて、大抵は女子と女子のあいだに座っていて、たまに理由もなく不二の隣にくる。隣に座ったからといって特筆すべき会話ややり取りがあるわけではないので、本当に理由はないらしい。
しかし今日に限っては理由があって隣にいる。ハン、と不二はまた鼻で笑いたい気分になる。
「祝いたいなら祝っていいよ」
百一回目ぐらいの(英二うぜえなあ)をこころの中で吐き出しながら面倒にまかせてこっちから話を振ってやると、菊丸はテニスコートで跳ね回っているときみたいに目を輝かせた。
「えっだって不二の誕生日今日じゃないじゃん」
「このあいだ見たスニーカーほしいなあ」
「でも不二の誕生日今日じゃないじゃん」
「現品限りって書いてあったよね」
「不二の誕生日今日じゃないじゃーん」
実に楽しげに声を弾ませる一方で菊丸が携帯を取り出したので、気分屋の名のとおりこのくだらない応酬に早くも飽きてくれたようだと不二は不覚にも内心安堵した。が、菊丸がにやにやと見せて寄越した携帯の画面には、先日二人でショッピングモールをふらついた際に不二の目に留まったスニーカーが写っていて、おまけにそれを履いているのが自宅の玄関先でモデル立ちをした超決め顔の菊丸だったので、
「英二うぜえええ!!」
不二のあんなにでっかい声はじめて聞いた、と後日菊丸は言った。わりと本気で喉輪をしたら彼にしてはめずらしく切羽詰った様子で謝ってきたのでその場は穏便にすませてやったが、向こう一年間は許さないと決めている。
生まれて十五年目の二月二十八日、不二は音楽教師に怒られて、担任にもチクられて怒られて、その日一日クラスがなんとなくざわついていて、「品行方正な不二周助」の評判はちょっと下がったようである。
* * *
祝ってなくてすいません。ていう謝罪がもはやデフォルトですいません。
あと閏年の計算あってるかどうか不安なんですが確認してる時間なかったっていうだめっぷりでほんとすいません…。
毎回言ってますが、こういう不二が、こういう36が好きです…。
拍手ありがとうございます、とってもうれしいです。
日記はまたあらためて書きます。
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