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三日に一度くらい書けたらいいなの日記。たまにみじかい話も書きます。
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じろうさんおめでとう!

(テニス/ジロ跡とがっくん)



 ガン、と蹴飛ばしたら案外あっさり吹っ飛んでしまった。ブラボーおれの脚力、サッカー部に入ればよかったかも。
 バラバラとゴミを撒き散らしながらとても軽いもののように宙を舞うゴミ箱の向こうに跡部の姿を見て、慈郎は無駄に目をみひらいた。
 もう放課後なのに眠くない。放課後だから眠くない。今日はそっこー帰って妹に絵本を読んでやってそれから兄ちゃんとゲームをする予定なのである。今日こそあのうんこ兄貴をフルボッコにするの。だからおれは忙しいの。部活? 知るか。
 慈郎がリュックをつかみ、ドアの敷居の上にけたたましい音を立てて落下したゴミ箱をまたいでそのまま教室を出ようとしても、廊下に立った跡部は何も言わなかった。腹のすいたけものみたいに尖った目をしておきながらまるで睨んでいるとも見えない、器用にただ冷たいだけの視線を慈郎に向けたまま、足元に転がってきた紙屑をスマートによけた。跡部の爪先に届かなかった紙屑がさっき自分が丸めて捨てた来週の練習試合のオーダー表であると慈郎にはわかった。
 慈郎がシングルス1だったから捨てた。跡部の名前がなかったから、捨てた。
 慈郎は跡部の横をすり抜けて廊下を歩き出した。てめえジロー待ちやがれ、と怒鳴らない跡部なんてきらいだ。
「跡部がおまえの教室んとこでゴミ拾ってたぜ」
 昇降口で慈郎が靴を履き替えていると、背後で岳人の声がした。慈郎は振り返らないまま、あっそう、と答えた。
「帰んのかよ」
「おれはいそがしーの」
「レギュラー落ちても知らねえぞ」
「おれシングルス1だから落ちるわけねーの」
 スニーカーに履き替えた爪先を乱暴に地面に打ちつけながら慈郎は振り返る。ジャージ姿の岳人は慈郎の据わった目つきを正面から受け止めると、遠慮なく嫌そうな顔をしてため息をついた。
「あのなジロー、跡部が来週の試合に出ねえのは」
「こーしんをそだてるためでしょ。いろいろ考えてるんでしょ、部長として」
 オーダー表には、慈郎以外に正レギュラーの名前がなかった。シングルス1の慈郎に信を置いて、慈郎と準レギュラーだけで勝ちを取りにいく布陣が敷かれていた。
 馬っ鹿じゃねえの。
「じゃーね、がっくん」
 手を振って昇降口を出ようとする慈郎に、手の代わりにラケットを振り返しながら、さして興味もなさそうな口調で岳人が尋ねる。
「おまえ跡部の何が気に入らないわけ」
「ばかなところ!」
 叫んで、慈郎は駆け出した。あっそう、と呆れたような笑い出しそうな岳人の声が追いかけてきた。
 跡部に信頼されるより大事なことが慈郎にはある、それをわかっていない跡部なんて大きらいだ。



***

じろう誕生日おめでとう!
例によって誕生日には関係ないわ、めでたくもかわいくもないわ、その上わかりにくいわでごめんなさい。

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