三日に一度くらい書けたらいいなの日記。たまにみじかい話も書きます。
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2025.04.20 Sunday
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スプリング カムズ
2009.03.01 Sunday
(P4/主花主)
「この春は僕らにとって新しく、そして悲しい季節になるだろうね」
生まれて此の方マイペースを崩したことがないようなオーラを背負っておきながら、実は結構あらゆる事象言動に流されやすい月森が、今度はなんの影響を受けたものか、唐突に口走った。
この春って、まだ一月ですが。冬真っ盛りなんですが。ていうか「僕」てなんなの気持ち悪い。と、花村はひそかに鳥肌を立てながら、勝手知ったる堂島家の居間でテレビに向けていた視線を、台所の流しに立つ月森の背中へと移動させる。
春、と月森が、花びらを噛み締めるような優しさとおそれを含んだ口調でまたくり返した。さっき二人でココアを飲んだマグカップと、朝食・昼食後の片付けをさぼっていたらしい溜まった食器類をまとめて洗う手は、変わらずてきぱきと動き続けている。
さして張っている様子もないのに月森の声は水音にさらわれることなくよく通るなあと、花村はぼんやり感心した。さすが演劇部。
「僕が発つその日がきたら、君は引き止めてくれるだろうか」
遥かに予想外の言葉に、こたつに入って蜜柑の皮など剥きながらぬくぬくと身も心も弛緩しきっていた花村は、驚いて思いきり背筋を伸ばす。
「お、おう! 引き止める! 全力で引き止める!」
両手で蜜柑を握り締めて花村が何度も頷くと、月森は水道の蛇口をひねって水を止め、ごくうっすらと眉を寄せて振り向いた。
「違う」
「は?」
「『そうできたらどんなにいいかしら』だ、メアリ」
はあ? ともう一度盛大に疑問の声を上げて、そして花村はすぐに気づいた。さすが演劇部!
「練習熱心ですねえこのやろう!」
「メアリ、そんな粗野な言葉は君には似合わ」
「誰がメアリか!」
「練習相手になってくれ、小沢の期待にこたえたいんだ」
「女のためかよ……」
憮然とする花村の神経をさらに逆撫でするごとく照れたような笑みを浮かべ、月森はまた流しに向き直って水音を響かせ始めた。花村は溜め息をつき、握り締めたせいで若干生あたたかくなってしまった蜜柑を口に放り込む。
「なあ、月森」
この春は、新しく、悲しい季節。
「俺が引き止めたら、お前ここに残ってくれんの?」
水音がまた止まった。月森が身体ごと振り返り、菜々子のTシャツとお揃いだというかものはしエプロン(ジュネスのオリジナル商品だがまさか需要があるとは思わなかった)を着けた締まらない格好で、すこしだけ困ったように眉を下げた。
「そうできたら、どんなにいいかしら」
おどけるというにはあまりにも穏やかな口調で月森が言って、けれど顔ではからかうようにニヤと笑ったので、花村もつられて笑いかけ、しかし耐えられずに目を逸らす。
なぜ自分たちは、自らの意思と力では住む場所を選ぶことすらままならないこどもなのだろう。喉が潰れるまで泣きわめいてでもわがままを通そうとする勇気を失った、中途半端な大人なのだろう。
花もあたたかな日差しもいらない。
春なんて、こなければいい。
***
なんかもっとやさしくてさびしい感じにしたかったのに…。いつものことだけど思ったように書けません、うう。そのうちちゃんとした更新でリベンジしたいです。さびしくてかなしくてどうしようもなくて、ただ笑おうとする番長とかが書きたい。そんな番長の態度にキレて泣きわめく花村も書きたい。笑う番長より泣く花村のほうが勇気があると思います。意気地なしの番長なんて大好きです。
あと、ものすごいうるわしい女言葉をしゃべる番長が書きたいです…。そのうちスケ番長を書こう(スケ番長はうるわしい言葉遣いはしないんじゃ…)
かものはしTシャツがジュネスオリジナルブランドってのはてけとーですすいません。
「この春は僕らにとって新しく、そして悲しい季節になるだろうね」
生まれて此の方マイペースを崩したことがないようなオーラを背負っておきながら、実は結構あらゆる事象言動に流されやすい月森が、今度はなんの影響を受けたものか、唐突に口走った。
この春って、まだ一月ですが。冬真っ盛りなんですが。ていうか「僕」てなんなの気持ち悪い。と、花村はひそかに鳥肌を立てながら、勝手知ったる堂島家の居間でテレビに向けていた視線を、台所の流しに立つ月森の背中へと移動させる。
春、と月森が、花びらを噛み締めるような優しさとおそれを含んだ口調でまたくり返した。さっき二人でココアを飲んだマグカップと、朝食・昼食後の片付けをさぼっていたらしい溜まった食器類をまとめて洗う手は、変わらずてきぱきと動き続けている。
さして張っている様子もないのに月森の声は水音にさらわれることなくよく通るなあと、花村はぼんやり感心した。さすが演劇部。
「僕が発つその日がきたら、君は引き止めてくれるだろうか」
遥かに予想外の言葉に、こたつに入って蜜柑の皮など剥きながらぬくぬくと身も心も弛緩しきっていた花村は、驚いて思いきり背筋を伸ばす。
「お、おう! 引き止める! 全力で引き止める!」
両手で蜜柑を握り締めて花村が何度も頷くと、月森は水道の蛇口をひねって水を止め、ごくうっすらと眉を寄せて振り向いた。
「違う」
「は?」
「『そうできたらどんなにいいかしら』だ、メアリ」
はあ? ともう一度盛大に疑問の声を上げて、そして花村はすぐに気づいた。さすが演劇部!
「練習熱心ですねえこのやろう!」
「メアリ、そんな粗野な言葉は君には似合わ」
「誰がメアリか!」
「練習相手になってくれ、小沢の期待にこたえたいんだ」
「女のためかよ……」
憮然とする花村の神経をさらに逆撫でするごとく照れたような笑みを浮かべ、月森はまた流しに向き直って水音を響かせ始めた。花村は溜め息をつき、握り締めたせいで若干生あたたかくなってしまった蜜柑を口に放り込む。
「なあ、月森」
この春は、新しく、悲しい季節。
「俺が引き止めたら、お前ここに残ってくれんの?」
水音がまた止まった。月森が身体ごと振り返り、菜々子のTシャツとお揃いだというかものはしエプロン(ジュネスのオリジナル商品だがまさか需要があるとは思わなかった)を着けた締まらない格好で、すこしだけ困ったように眉を下げた。
「そうできたら、どんなにいいかしら」
おどけるというにはあまりにも穏やかな口調で月森が言って、けれど顔ではからかうようにニヤと笑ったので、花村もつられて笑いかけ、しかし耐えられずに目を逸らす。
なぜ自分たちは、自らの意思と力では住む場所を選ぶことすらままならないこどもなのだろう。喉が潰れるまで泣きわめいてでもわがままを通そうとする勇気を失った、中途半端な大人なのだろう。
花もあたたかな日差しもいらない。
春なんて、こなければいい。
***
なんかもっとやさしくてさびしい感じにしたかったのに…。いつものことだけど思ったように書けません、うう。そのうちちゃんとした更新でリベンジしたいです。さびしくてかなしくてどうしようもなくて、ただ笑おうとする番長とかが書きたい。そんな番長の態度にキレて泣きわめく花村も書きたい。笑う番長より泣く花村のほうが勇気があると思います。意気地なしの番長なんて大好きです。
あと、ものすごいうるわしい女言葉をしゃべる番長が書きたいです…。そのうちスケ番長を書こう(スケ番長はうるわしい言葉遣いはしないんじゃ…)
かものはしTシャツがジュネスオリジナルブランドってのはてけとーですすいません。
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