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三日に一度くらい書けたらいいなの日記。たまにみじかい話も書きます。
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カン違いみたいだ。

(テニスじゃなくてすみません・おお振り/1年7組)

 無関係のような顔をしている。
 野球部。クラスメート。1年7組。
 まるで無関係のような顔をしている。
 二時間目と三時間目のあいだの短く貴重な十分間を、阿部と花井が惜しげもなく部活の相談ごとに費やしているのを、水谷は自分の席からぼけっと眺めていた。休み時間の喧騒の中、四列離れた席にいる彼らの会話が聞こえるはずもないけれど、ふたりとも特に笑いもせず、かといって取り立てて難しい顔をするでもなく、つまり適度にまじめに額を突き合わせてああだこうだ会話をこねくり回したり何かメモったりしているようなので、ただの雑談でないことは明白だ。と、推理とも呼べない推理をしつつ隣の席のクラスメートと雑談をして、水谷の十分間は終了した。
 次の休み時間も、教師が退室するなり阿部は花井の席へいき、何やらごにょごにょと話し込み始めた。プピピポプペペ、と隣で忙しなく響く携帯のプッシュ音を聞きながら、水谷はまたふたりを眺める。今日はバイトの都合で百枝が遅れるらしいので(「どおおおおっしても、て交替頼まれちゃってね、なるべく急いでくるけど私いないからってさぼったら握」以下略)、そのあいだの練習メニューの確認だろうか、なんてぼんやり考えた。
「フミキー、こないだ結局メタルギアどしたん?」
「あー買った」
「おっやりィ。貸して貸して」
「クリアしたらねー」
「してねえのかよ!」
 おっせえだっせえと隣が騒ぐのを、あーそー貸さなくていいのね? と目だけ笑わない笑顔で黙らせる。こういうくだらないふざけ合いが好きだし、ゲームと女の子と最近目覚めたらしいダブルダッチ(何があったのだろう彼に)の話が九割を占める隣のこいつも好きだ。
 横目で視線を阿部と花井に戻すと、ふたりはちょっと難しい顔になっていた。花井が眼鏡をはずしてひと息つき、くるくるとシャーペンを回す。水谷は視線を逸らした。ほれ、と隣のやつが自慢げに眼前に突きつけてきた携帯の、某人気上昇中アイドルとの2ショット写メに、うううっそなにこれどーしたのマジで!? と思いきり食いついた。
 同じ部活、同じクラス、いま同じ場所にいるけれど、オレとあいつらはまるで無関係みたいだ。
「水谷ー」
 隣ではなく、すこし遠くで呼ぶ声がした。
「みーずたに!」
 見ると、阿部が手招きをしている。花井は相変わらずシャーペンを回している。
「ほいほーい」
 水谷は席を立ち、ふたりのもとに向かった。
 窓の外には青空。熱気。放課後になればこいつらと、みんなと、走って投げて打って叫ぶ。笑う。きつくて楽しくてしょうがない!

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